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芸の術、あるいはヘイトスピーチ

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仮にも、一瞬でも何らかの表現をしようと/受け取りたいと思ったことが一度でもあるなら、他人の表現をクソだとか有害だとか断じて「それを発信する」ことだけは絶対にしてはならない。


オレが大好きな英語の言い回しで「not for me」というのがあります。

レビューサイトとかでたまに見かける言い回しなんですけど、これ、すごい。絶妙に婉曲。すれ違い得ることが前提。いいとかダメとかじゃなく、単に、オレとお前と大五郎は同じ平面上にいません、と言っているだけ。貶してるわけでもなければ謝ってるわけでもない。


この段落は極めて個人的な話になります。

ある同人誌即売会で、行きがかり上、見本誌の回収をお手伝いしたことがあります。荷物番って言うから早めに来たのに、聞いてた話と違うぞおい、とか言ってる場合ではなかった。それはともかく、同人誌即売会で何らかの表現の頒布を許可するかどうかの判断基準のひとつとして、一応、その即売会が挙行される地域においての法が遵守されていることの確認をする必要が……ええい面倒くせえ、要は諸々モロ出しはダメなのよ。だから運営側としては、頒布されている(されようとしている)現物を確認する必要がある。

で、オレは当然、それを真っ先に見るわけじゃないすか。当日の開場直前に1部ずつ回収するんだから。もう、すんごいのありましたよ。具体的な内容は書きませんけどオレからすれば反吐が出るようなやつ。オレは大嫌いです、ああいうのは。何が面白くてああいうのを売ろうとするのか全く理解できないし、喜んで買う人の気も知れない。あれを現実でやったら暴行だし傷害です。ちょっと言ってしまえば切断系だ。


でもそんなの、「オレが見る分には、オレにとっては」有害なだけですよね。

単に、オレが嫌いなだけだ。オレ向きじゃないだけ。not for meなだけ。

そして、その表現を頒布してる側だって、あれでもできる限り自主的に棲み分けようとはしてるはずなんです。まかり間違って頒布してる島に迷い込んできちゃったんならごめんなさい、こっちから客引きはしませんから、ダメっぽそうならスーッと通り過ぎてください、と祈るしかない。だからオレも開場前は普通に回収するし、本開場してから迷い込んじゃったらもちろんスーッと通り過ぎます。

そして、想像は想像として/創作は創作として楽しめる人が立ち寄って買うなら、そこから先はそれでいい、と素直に思うの。

同人誌即売会での一般的なお約束として「お買い物気分/お客様気分でご来場するんじゃねえ馬鹿」というのがあると思います。今回のコミケに参加したある一般参加者が吐いた名言で「世界のどのような場所であっても未知の世界のルールとマナーを熟知しなければわたくし達が真の敬意を払っていることが伝わらないでしょう」とか「私達の中の承太郎と花京院、あなたの中の承太郎と花京院どちらも大切にいたしましょう 」 とかいうのがあるらしく、ほんと、そんな感じ。


ルールとは、マナーとは、モラルとは。

「あなたの言うことには全く賛成はできませんが、それを言う権利があなたにあるということについては、命に代えても、私はそれを護るつもりです」って言ったの誰だっけ。

もちろん、頒布した(≒公言した)ことへの責任は伴いますよ。あるヒトの自由の範囲は、ホカのヒトの自由を侵害したところで終わるんだし。

ただ、侵害された「と断じる」ことに関しては、もう少し慎重にならなきゃいけないんじゃないかなあ、と感じることが近年目立って増えているようにも強く思うんです。

クソって言うなら「自分にとっては」という枕詞をつけるべきだし、死ねと言って全人格を否定するならまずお前が生まれてくるな。それでも結果は同じだ。

投稿者 zig5z7 | 返信 (0) | トラックバック (0)

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